2024年4月1日より「化学物質の自律的管理」が定めされています。一般的なオフィスでは化学物質は無縁と思えますが、コピー機の業務用トナーに有害な化学物質を含んでいます。このため、人数・業種に関係なくほとんどの事業場で「化学物質管理者」の選任が必要です。その他にも化学物質の実験を行っている研究室、大学、高校、中学、教育機関にも基本的には適応されます。今回は本格始動した化学物質の自律的管理について、解説します。
図1
また会社にこのような物は置いていないですか?
接着剤、シール剤、吸着剤、芳香剤、消臭剤、凍結防止剤、合金、消毒剤、害虫駆除剤、コーティング、塗料、うすめ液、ペイントリムーバー、充填剤、しっくい、粘土、爆薬、肥料、燃料、表面処理剤(めっき処理剤)、熱媒、油圧液、インク、トナー、pH調整剤、凝集剤、沈降剤、中和剤、実験用化学物質、染色剤、仕上げ剤、潤滑剤、グリース、剥離剤、植物保護剤、化学薬品、写真現像等に使用する薬品、研磨剤、コンパウンド、漂白剤、洗濯用洗剤、洗浄剤、硬水軟水化剤、水処理用化学製品、溶接剤、はんだ付け製品(フラックスコーティングまたはフラックスコアを含む)、フラックス製品、抽出剤、防さび剤、発泡剤
さらにこのような作業は行っていないですか?
化学物質の合成、調合、混合 カレンダー加工 染色 散布 印刷、現像 スプレー剤の使用(空中分散、表面コーティング、接着、つや出し、洗浄、吹き付け等のための噴霧) 化学物質を用いた洗浄、清掃、漂白、消毒、駆除 化学物質の移し替え、充填、計量、サンプリング、ローリング(圧延)、ブラッシング、発泡樹脂製造(発泡処理)、浸漬処理、圧縮成形、押し出し成形、ペレット化等を含む成形作業、油分の塗布、塗り込み、塗装/塗膜の剥離、化学物質を用いた修理修復やメンテナンス、製品の切断、冷間圧延、組み立て/分解 鋳造、溶融固体の使用、熱間圧延、加熱形成、研削、機械的切断、掘削、研磨 溶接、はんだ付け、切削、ろう付け、フレーム切断、金属粉製造、化学物質を使用した実験
令和4年(2022年)5月31日の労働安全衛生法関係法令の改正により、新たな化学物質管理の制度が導入され、事業者は職場における自律的な化学物質管理が求められています。背景には、国内で、輸入、製造、使用されている化学物質は、数万種類にのぼり、その中には、危険性や有害性が不明な物質が多く含まれているからです。化学物質を原因とする労働災害は年間で450件程度を推移しており、がんや深刻な遅発性の病気も後を絶ちません、実際に印刷工場でジクロロプロパンの暴露により胆管がんが発生し、管理者の責任を問われて裁判となっているケースもあります。これらを踏まえて、新たな化学物質規制の制度が導入されました。
リスクアセスメント対象物は法令改正前の674物質から令和8年(2026年)には約2,900種類まで増える予定で、 危険性・有害性が確認された物質は全て規制の対象になる予定です。職場で扱う化学物質が増えているため、事業者はこれまで以上に健康被害を予防する措置を取る必要があります。
図2
それでは具体的な改正の内容を見ていきましょう!
(安衛則)
事業場における化学物質管理に関する管理体制の強化
化学物質管理者の選任の義務化
選任が必要な事業場としては、リスクアセスメント対象物を製造、取り扱い、または譲渡提供をする事業場で必須です。一般消費者の生活の用に供される製品のみを取り扱う事業場は対象外です。
化学物質管理者の選任要件として、リスクアセスメント対象物の製造事業場は、専門的講習(厚生労働省第276号)の修了者から選任する。リスクアセスメント対象物の製造事業場以外の事業場は、資格要件はないが、専門的講習に準ずる講習等の受講が推奨されている。
職務としては、
①ラベル・SDS等の確認
②化学物質に関わるリスクアセスメントの実施管理
③リスクアセスメント結果に基づくばく露防止措置の選択、実施の管理
④化学物質の自律的な管理に関わる各種記録の作成保持
⑤化学物質に自律的な管理に関わる労働者の周知・教育
⑥ラベル・SDSの作成(リスクアセスメント対象物の製造事業場の場合)
⑦リスクアセスメント対象物による労働災害が発生した場合の対応
保護具着用管理責任者の選任の義務化
上記の選任要件は、化学物質の管理に関わる業務を適切に実施できる能力を有する者とされており、職務は、有効な保護具の選択、労働者の使用状況の管理その他保護具の管理に関わる業務。
雇入れ時教育の拡充
危険性・有害性のある化学物質を製造し、または取り扱うすべての事業ばで、化学物質の安全衛生にい関わる必要な教育をする必要があります。
図3
図:厚生労働省ホームページ
参考:労働衛生のしおり(令和6年)、安全の指標(令和6年)
COCORO GROUP株式会社 産業医労働衛生コンサルタント 垂水良介
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