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  • 執筆者の写真垂水良介

精神科医が産業医をするメリット・デメリット

更新日:5 時間前


COCORO GROUP株式会社代表産業医の垂水良介です。初コラムですが、いきなり挑戦的な内容になってしまいました。私は、平成30年から精神科医と産業医の業務を行ってきました。あくまでも個人の意見として記事の内容を見守っていただけると幸いです。 早速ですが、メンタルヘルスと産業保健は切っても切れない関係にあります。産業医募集の求人情報においても「メンタルヘルスに素養のある産業医」を求められているのを見かけ、一定の需要があることは確かでしょう。しかし、実際は、私がはじめて、産業医をするときに、産業医として職歴のない私を歓迎してくれる企業はなかなか見つかりませんでした。たくさんの面接を受けて、ようやく採用になったのは、ある東北の倉庫で往復に8時間かけて職歴を積み上げるしかありませんでした。メンタルヘルスに素養があるとはいえ、産業医の仕事ができることが大前提です。ここで産業医と精神科医の違いを簡単にまとめました。


表:産業医と精神科医の違い


これらをみる限り、全く別の仕事であることが言えます。


本題に戻り、精神科医が産業医をやるメリットを述べます。


  • 信頼できる医療機関に紹介ができる

これが頻度的には最も多いと思います。どこの地域にどんな中核病院があり、クリニックであれば、どのような先生がいるか日常臨床を通して熟知しています。企業にとって重要な仕事を担っている従業員の方が、早く復帰するには、主治医の腕にかかっているとも言えます。ここで注意なのは産業医の独立性・中立性の観点からは、止むを得ない事情を除いて、関係性の強い先生に紹介することは避けています。



  • 治療の内容を瞬時に理解し、治療反応や経過を推測し企業ごとの休職制度と照らし合わせる


例えば、抗うつ薬の効果は最低でも2週間立たないと現れないと言われ、実際には、1か月〜3ヶ月の期間が必要と言われています。この治療反応にかかる期間がわかっているため、産業医面談となった方への助言を休職期間に照らし合わせて考えることができます。休職制度については本来は企業の任意制度であり、企業ごとで期間や内容は違います。基本的には勤続年数によっても変わりますが、数年間休職が可能な場合もあれば、3ヶ月の場合もあり、また、休職制度がない場合もあります。復職を支援するときに、特に期間はとても大事なため、治療の反応性が理解できていると言うことは強みかもしれません。




  • 重症度の高い精神疾患の方々に接してきている


一般的な生活をしていたら、精神疾患の重症度の高い方と接することはありません。しかし、精神疾患としての本質は最重症の方々にあると言えます。企業で働く人の中には、そのような方はいない可能性が高いですが、ある日突然に重い精神疾患になる方はいらっしゃいます。精神科医であるわたし達は、どんなことがあっても動じず、軽症から最重症の従業員のメンタルヘルスに対応し、人事労務を担当する方々に産業医として助言し、企業における責任も最善を尽くせるようサポートします。



  • 治療者に積極的に意見を求める


昨今、精神科クリニックは増加し、気軽に診断書は発行される傾向になったと言われています。また、オンラインのメンタルクリニックでは、限られた情報のみで診断と治療を行っているのが実情だと言われています。 そんな中、就業上の観点から確認や疑問があれば、わたしたちは積極的に主治医に書面で意見を求めていきます。急ぐ必要のあることでは医療機関に電話をし、必要に応じて主治医に直接会いにいくこともします。



そして一番最後に精神科医が産業医をやる上でのデメリットです。


  • 2次・3次予防対策で満足してしまう

つまり、メンタルヘルス対策を求められる企業で働くことが多く、早期発見と休復職者への対応で手一杯になってしまい、1次予防まで手が回らないのです。


表:メンタルヘルス対策の1次2次3次予防

予防

具体例

1次予防

職場環境改善を行う、ストレスチェック、企業研修

2次予防

メンタル不調者を早期に発見して医療機関に紹介する

3次予防

休職したメンタル不調者の職場復帰支援と再発予防

産業医の醍醐味といえば1次予防です。労働者の健康を未然に守ることが花形とされています。精神科医の産業医は、意識的に活動をしないと1次予防を学び、経験できないかもしれません。

例えば、過重労働が背景にあり、メンタル不調者が出ている事業場に2次3次予防だけを行っても改善はできず、抜本的な対策が必要となっております。具体的には、労働衛生マネジメントシステム(OSHMS)の導入でこれを改善することができます。OSHMSは、事業者が労働者の協力の下に「計画(Plan)-実施(Do)-評価(Check)-改善(Act)」(「PDCAサイクル」といわれます)という一連の過程を定めて、継続的な安全衛生管理を自主的に進めることにより、労働災害の防止と労働者の健康増進、さらに進んで快適な職場環境を形成し、事業場の安全衛生水準の向上を図ることを目的とした安全衛生管理の仕組みです。こういった取り組みについては、精神科医出身の産業医は弱いと言えます。


出典:厚生労働省ホームページ


以上となりましたが、はじめてのコラムでした。

最後まで見ていただきありがとうございます!





COCORO GROUP株式会社 

産業医 垂水良介

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